韓国旅行|『82年生まれ、キム・ジヨン』が夫コンユを悪魔にしなかった理由 (Review) ♪
▲映画「82年生まれ、キム・ジヨン」の各場面ⓒロッテエンターテインメント
◇[レビュー]映画「82年生まれ、キム・ジヨン」の涙、そして質問
日が暮れると胸がどきんとします。空虚な目で窓の外を眺めます。よく別の人になります。お祖母さんから、母ミスク、母からまたジヨンへ。
「キム・ジヨン」は名前と声を失った女性の名前です。映画の中の彼女が経験する苦痛は、決して脈絡なく登場したファンタジーではなく、極めて社会的に形成されたものです。
原作の読者にも強い印象を残した「憑依」は、過去と現在を媒介する装置です。「到底だめだ」と噴出した女性の声です。
ジヨンの人生は単に個人のものではなく、女性嫌悪、家父長制の悠久な歴史が作った結果です。
原作がそうだったように、映画は女性たちが経験する多様な事例を紹介します。
ジヨンが経験する「経歴断絶」はもちろん、固定された性役割規範に阻まれ、自分の人生を送ることができない母親たち、「能力者」に分類されるキムチーム長さえ、ひざまずかせる「ガラスの天井」、トイレでも緊張を緩められない不法撮影に対する恐怖などをメインストーリーに編み出しました。
初の長編映画を演出したキム・ドヨン監督の手腕がここで光ります。
適切なタイミングで「フラッシュバック」を活用しつつ、単なる事例集に留まりませんでした。
むしろ今の「キム・ジヨン」がどんな経験を通じて作られたのかを身近に感じさせながら、普遍性を獲得します。
ポスターを見ただけでも分かりますが、この物語の主人公はキム・ジヨンです。
しかし、ジヨンの夫「79年生まれのチョン・テヒョン」もかなりの比重を占めて言います。
劇中のテヒョンはかなり善良な人に見えます。彼は会社から帰ってきて、子供の身体を洗ってあげたり、涙を流したりして妻のことを心配します。
「ジヨンの重荷を軽くしてあげる」と言って、育児休職を悩んだりもします。
しかし、彼には根本的な限界があります。テヒョンは、「子供を生めば、多くのことが変わるだろう」と心配するジヨンが理解できません。
復職の知らせに浮かれているジヨンに笑いで応えられません。小さな単語の選択でも立場の違いが表れています。
育児を「一緒にしよう」と言うのではなく、「私が助ければいいじゃないか」と言うのです。
テヒョンを悪魔化しないことは、むしろこの映画に説得力を与えています。 「善人」も構造の受益者または相対的加害者になるということです。
一方、原作小説も受けた批判ですが、この映画が中産層-高学歴-既婚女性の経験だけに限られていたのではないかという批判を見ました。
しかし、この作品はジヨンとは違う人生を生きる女性を「削除」するものではありません。「82年生まれ、キム・ジヨン」が「全ての韓国女性」の同意語ではないからです。
そして確かなことは、中産層を含むいかなる階層でも差別の論理が作動しているということ。
これから多様な階層の差別に照明をあてる商業映画が登場することを期待したいです。
◇現実と共鳴する「キム・ジヨン」の問いかけ
▲映画「82年生まれ、キム・ジヨン」の一場面ⓒロッテエンターテインメント
なぜ、多くの女性たちがこの映画を見て涙を流し、連帯意識を共有するのでしょうか。
この映画の中のジヨンと母親が交わす涙はどこから来たのでしょうか。
「82年生まれ、キム・ジヨン」は様々な瞬間現実と共鳴します。現実が出す破裂音を修正できるのは、「ケンカはやめよう」といったスローガンではありません。
温かい胸の内を秘めたまま、同時に鋭い問題意識を持たなければなりません。
キム·ジヨンを演じた俳優チョン·ユミは<オーマイニュース>とのインタビューで、「本当に勇気を出すべきことがほかにあるというのは、自分の声を出される方々に向けた言葉です」と声を出す彼らに対する連帯とエールを送りました。
この映画は各自が立っている位置によって違うように見える作品であり、同時に個人の役割を悩ませる作品です。
少なくとも、ジヨンが学生時代バスで出会ったおばさん(ヨム・ヘラン)のようにスカーフを差し出せる人にならなければならないでしょう。
今は300万観客突破を控えていますが、この映画は、公開を控え、アンチ・フェミニストによって非常識に罵倒されました。
映画の原作小説「82年生まれ、キム・ジヨン」(チョ・ナムジュ)は、女性を洗脳する「禁書」として悪魔化されました。
あるガールズグループのメンバーがこの小説を読んだと言った時、暴言が相次いだ狂風は映画にも繋がりました。
映画の封切り前に行う「評点テロ」が、すごい遊戯のように思われたりもしました。
「50年生まれならいざ知らず、80年生まれが何の差別を経験したというのか」「苦痛というのはただかき集めただけ、このような人生が存在するのかどうか」と批判する世論もありました。
そうした者たちに、キム・ジオンさんは「マムチュン」云々する者たちに言ったように、このように一喝するのではないでしょうか。
「もしもし、私のことをご存じですか?」
★JTBCNEWS10/28
映画が始まった時、ベランダに立っていたジヨンの目は空虚でした。しかし、映画の末尾、ジヨンの顔には、かすかな笑みが浮かんでいました。
ついに名前と声を取り戻したからです。ほろ苦く皮肉な後味を残した小説と比べると、批判の矛先が鈍くなりました。
商業映画としての妥協はある程度あったとも考えられます。
しかし、この映画は「歴史の進歩」に対する希望を捨てなかったという点に注目して観るというのはどうでしょうか。
そのようにして、キム・ジヨンは、あなたの元に歩み寄ります。
この世のすべてのキム・ジヨンの人生に春風が吹きますように、女性が女性という理由で自分が描いた人生の絵をあきらめないことを願う希望です。
ひとこと
「歴史の進歩」に対する希望を捨てなかったキム・ドヨン監督が描いた「キム・ジヨン」。その「希望」をきれいな心で真摯に演じて観客の元へ届けた出演俳優たち。まさにワンチームが成し遂げた結果ですね♪
*記事はohmynewsよりお借りしました。
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