韓国社会|ソウルのノスタルジー♪
その店のオーナーは、あまりお客が来ないせいか、いつもテレビを見ているか、パソコンの画面を眺めている。そして、その店にはアルバイトの学生もいない。
いつも、オーナーのおじさん一人が、昼も夜も店の中に座っている。ある日、長い旅から帰ってきて再び、その店の前を通ると、店のドアは閉められ電気も消えていた。
そして、建物の前には、「テナント募集」という文字が・・・。
トム・ハンクスの映画「ユーガットメール」では、代々子供が店を継いで、ニューヨークで数十年の間経営してきた書店(shop around the corner)が
近くに大型フランチャイズ書店が入ってくることによって、最終的に書店のドアを永遠に閉めるという場面があった。
そして、最後に店のドアには、「42年間の営業を終えてドアを閉じます。これまでの声援に感謝しています。」という文章が貼られた。まさしく、このようなシーンと似たようなことが、韓国の小さな個人経営のコンビニに起きている。
個人オーナーの店舗が消えていくのはコンビニに限ったことではない。韓国の町でよく見かける「ニューヨーク製菓」というパン屋があるが、このパン屋決してチェーン店ではないのだ。
普通にあんぱん、クリームパンやケーキを販売する地域の個人のパン屋である。ニューヨークという言葉の響きがおしゃれに聞こえたせいか
パン屋の名前にニューヨークを入れるのが1970年代から80年代のブームであったため、関係はないのに次々とニューヨークと名乗る店が出来たのだ。
ある小説家のエッセイの中に面白い「ニューヨーク製菓」の話がある
パン屋のおじさんは、夕方になると売れ残ったケーキをつまみにして、一人でちびちび焼酎を飲んでいた。夜遅くにケーキをつまみとしてお酒を飲んでいるそのおじさんの店に行くと、いつもあんぱんを買う私に余ったクリームパンをおまけにくれるようになった。
その後も、おじさんはケーキをつまみにお酒を飲む。ケーキが焼酎に合ったのだろうか。余ったケーキがもったいなかったのだろうか。それは分からない。
しかし、面白いのは、おじさんが食べたケーキの数だけ日々おじさんの身体もパンパンに膨れ上がっていったということである。
そして、そのおじさんの「ニューヨーク製菓」はある日突然閉店し工事が始まった。その後、新しい店が入った。大型フランチャイズベーカリーに変わったのである。
そこには、おじさんの手作り感いっぱいのパンの代わりに、毎朝、本社の大型工場で製造されたパンがきれいに並んでいた。
近所のおじさんたちが、長い間運営していたお店が一つ二つと消えていき、ソウルの町は大型コンビニエンスストアやパン屋が占めるようになった。
トッポギも、今はチェーン展開しているし、チキンもチェーン店に変わっている。変貌していくソウルの町の風景に、少し寂しい気持ちがするのは私だけだろうか。
ケーキをつまみに焼酎を飲んでいたおじさんのこれからがとても気になる。ソウルを歩く時チェーン店ではなく個人の店を見つけて、少しぶっきらぼうなオーナーの対応にドキドキしながらも、美味しい食事をする時間があってもいいのではないだろかと思う。
これもノスタルジアかな・・・。
今日は朝鮮日報に載った記事からご紹介しました。ほのぼのとしたおじさんの絵も朝鮮日報からお借りしました。
日本も同じですが、フランチャイズのチェーン店ばかりになると、町の表情が消え、どこも同じ景色になってしまうような気がします。
日本ではないのにソウルの北村あたりで、なぜかほっとする懐かしい景色に出会うことがあります。いつまでも、そのままでいてほしいと心から願います。
2011年12月10日
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カテゴリ: 韓国社会
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